「配員計画って、ちゃんとやっていますか?」
と聞かれて、即答できる会社は意外と多くありません。
とりあえずプロジェクト計画(WBS)を作っている
なんとなく“この人が空いているから”で割り当てている
Excelで各チームがそれぞれ配員表を持っている
どれも現場では“あるある”ですが、
冷静に見ると「配員“計画”」というよりは「配員“対応”」になっているケースがほとんどです。
この記事では、配員計画をテーマに
ありがちな3つのタイプ
そこから生まれる“3つの壁”
自社がいまどこにいるかのセルフチェック
これから配員計画を見直すときのポイント
を整理します。
TimeTracker NXなどの工数管理ツールをお使いの方はもちろん、
「配員計画ってそもそも何から考えればいいの?」という方にも、
自社の“いまの立ち位置”を確認するヒントになれば幸いです。
まずは、部長クラス・PMO・現場PMにぜひ問いかけてほしい3つの質問があります。
キラー質問:
「配員計画って、ちゃんとやっていますか?
それとも、いきなりプロジェクト計画に落とし込んでいますか?」
典型的な状態はこんな感じです。
いきなりWBS/ガントチャートを作り始める
「この人、今あいてる?」でアサインが決まる
リソース配分は、管理職の“頭の中”とミーティングだけで決まる
一見まわっているように見えても、
忙しい人に仕事が集中する
プロジェクトが増えた途端に破綻する
「誰が何%ぐらい埋まっているか」が誰にも説明できない
という“じわじわ型のリスク”を抱えています。
キラー質問:
「配員計画、うまく回っていますか?
Excelが壊れたり、どれが最新版かわからなくなったりしていませんか?」
多くの現場がここに当てはまります。
チームごと/部門ごとにExcel配員表がある
担当者しか式が理解できない
列・行を少し変えただけで式が崩壊する
「最終版_最新_ver3_final.xlsx」がフォルダ内に並ぶ
この状態の“怖さ”は、
Excelが壊れた瞬間に、配員の“全体像”も壊れること
計画の履歴(いつ・どのタイミングでどう変えたか)が残らないこと
です。
キラー質問:
「配員計画はうまくできているようですが、
計画と実績の比較を、どのくらい定期的に見ていますか?」
この層は、一見“優等生”に見えます。
配員表はきれいに整っている
プロジェクト開始前に、それなりの精度で計画が作れている
レビュー会議でも「とりあえず計画」は説明できる
ただし、よく聞くとこういう状況になりがちです。
実績が別システム・別ファイルにあり、簡単に突き合わせできない
「当初計画 vs 現在の配員」を定点観測していない
気づいたら、計画と現実のギャップが“見なかったこと”になっている
結果として、**「計画が独り歩きしている」**状態になります。
上の3タイプからは、共通する“3つの壁”が見えてきます。
行・列が増えるたびに式の参照が崩れる
担当者が異動・退職すると、誰も修正できなくなる
マクロや複雑な関数に依存していて、ブラックボックス化する
結果:
「このExcelがなければ配員ができない」という属人化
少し構成を変えたいだけなのに、怖くて触れない
計画を上書きしてしまい、「当初案」が消える
月単位・四半期単位での“計画FIX”がどこにも残っていない
「あのとき何を前提にしていたか」を検証できない
結果:
「当初の読みが甘かったのか」「途中で何が起きたのか」がわからない
プロジェクトが終わるたびに、学びが残らず、毎回“ぶっつけ本番”
計画は作ったが、実績との比較は“年に数回のレビューだけ”
実績は工数管理ツールや勤怠で取っているが、配員表との関係が見えない
経営会議では「なんとなくの感覚」で議論してしまう
結果:
計画が「作ることが目的」になり、意思決定に活かされない
赤字プロジェクトや人員逼迫に、後から気づく
いまの話を踏まえて、簡単なセルフチェックを用意しました。
「はい/いいえ」で答えてみてください。
プロジェクト開始前に「誰を・いつ・どの業務に割り当てるか」を一覧で説明できる
配員の一覧は、Excelではなく全員が同じ画面・同じデータで参照できる
配員計画の「当初案」「見直し版」を、節目ごとに保存して比較できる
配員計画と、工数実績(TimeTracker など)のデータを同じ粒度で照合できる
「この配員計画で、この案件は黒字になるか?」を、開始前におおよそ判断している
「いいえ」が多いほど、
タイプ① or ②(やっていない/Excelで苦しんでいる)
壁①〜③のどれか
にはまっている可能性が高い状態です。
では、ここからどう配員計画を見直していけばよいのか。
現場でよく使う視点を4つに絞って整理します。
プロジェクト計画(What/When)とは別に、
「Who(誰が・いつ・どのくらい)」の計画を一段手前で考える
「空いている人を埋める」ではなく、
役割・スキル・育成も含めた配員方針を明文化する
いきなりすべてをやめる必要はありませんが、
部門単位
重要プロジェクト単位
など、リスクの高い領域からExcel依存を減らすのがおすすめです。
ポイントは、
配員情報を一元管理できること
「誰が・いつ・どの案件に」という情報を、同じ画面で俯瞰できること
TimeTrackerのような工数管理ツールや、
配員計画に対応したシステムを組み合わせることで、
Excelの依存や属人化のリスクを減らせます。
年度開始/四半期開始/大型案件のキックオフなど、
**「ここで一度計画を確定する」タイミング(ベースライン)**を決めておく
ベースラインごとに、
当初計画
見直し後の計画
実績
を比較できるようにしておくことで、
**「どこで読み違えたのか」「どこでリカバリできたのか」**が見えるようになります。
せっかくTimeTracker NXなどで工数実績が取れていても、
配員計画と粒度がずれていると比較ができません。
たとえば、
配員:人月/月単位
実績:時間/日単位
だと、厳密な予実管理や分析が難しくなります。
可能であれば、
「人月/月」 or 「時間/月」など、
計画と実績の単位・粒度を揃えることを意識してみてください。
この記事のポイントを改めて整理すると、次のようになります。
多くの会社は、
配員計画をそもそもやっていない
Excelでなんとかしているが壊れがち
計画はきれいだが、実績と結びつかない
のどこかに当てはまる
そこには
Excelが壊れる
ベースラインが残らない
計画が独り歩きする
という3つの“壁”がある
配員計画を見直す第一歩は、
「うちはどのタイプか?」
「どの壁に一番苦しんでいるか?」
を言葉にしてみること
そのうえで、
Who(配員)の計画を切り出す
Excelから一部でもシステム化を進める
ベースラインを決めて保存する
計画と実績の粒度を揃える
といった小さな改善から始めるのが現実的です。
「配員計画、ちゃんとやっていますか?」
この問いを、ぜひ社内で一度投げかけてみてください。
次のステップとして、
自社の配員計画タイプをもう少し詳しく診断するチェックリスト
配員計画と工数管理(TimeTracker RXなど)を連携させる考え方
なども整理していければと思います。
この記事が、その最初の一歩になればうれしいです。